【読書】高階 秀爾『名画を見る眼』
今まで西洋芸術(絵画・クラシック音楽)に関して、私はそれがなんであるのかということはさっぱりわからず、「あーなんかいい感じ」と思うものを鑑賞するのみだった。今回渋谷Bunkamuraで開催中のルーベンス展を見に行こうと思い立ち、西洋芸術をちょっと(ほんとちょっと)勉強してからいくかーと思ったので、以前購入して一度も開かれずほこりをかぶっていた本書を取り出した。
- 作者: 高階秀爾
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1969/10/20
- メディア: 新書
- 購入: 4人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (36件) を見る
ファン・アイクからマネまで、見ながら学べる
本書はファン・アイクからマネまで画家15人の15作品を主に時代順にとりあげ解説を加えていくスタイルをとっている。この時代を切り取った理由を高階は以下のように説明している。
時代をルネッサンスから十九世紀までとしたのは、歴史的に見て、ファン・アイクからマネまでの四百年の間に、西洋の絵画はその輝かしい歴史のひとつのサイクルが新しく始まって、そして終わったと言い得る
(本書 p.190)
1つの作品について、そのエピソード、使用されている技巧、そして歴史的背景が一通り解説されている。そして本書を通読することで西洋近代絵画の歴史・技巧の基本を学べるようになっている。
ファン・アイクの『アルノルフィニ夫妻の結婚』でシンボルから絵画を読み解く手順を示し、レンブラントの『フローラ』で「主題」・「モティーフ」といった基本的な用語を導入する。
デューラーの『メランコリア・Ⅰ』で版画技法の紹介をし、プーサンの『サビニの女たちの掠奪』で激しい動きの中に緻密で安定した構図があることを示す。
フェルメールの『画家のアトリエ』で三次元空間表現技法の緻密さを示し、ドラクロワの『アルジェの女たち』で補色の関係を導入する。
ひとつひとつの絵画を、楽しみながら、味わいながら、西洋近代絵画の流れ・技巧をおさらいすることができる。
「わかり難い」ことがわかりやすい
高階氏の解説は、明瞭でかつ刺激的だ。40年以上前の本であるが、古さなど微塵も感じない。むしろ目の前で絵画のレクチャーを受けているような、そんな臨場感すら感じる。紹介された15の絵画が、どのようにすばらしいか、どの点が「見るべき点」なのか、それが非常にわかりやすく紹介されている。そして、本書を読むなかでわかるのが、西洋絵画をより深い次元で鑑賞するためには、絵画の描かれた時代の知識・古代ギリシャや聖書など西洋的教養が必要ということだ。その意味で、私にとって西洋絵画は「わかり難い」、ムズカシイものだ。
その「難しさ」がこれほどまでにわかりやすく示されているという点が、本書のすごいところ、おすすめポイントだとも思う。