『語りかける中学数学 問題集』のはなし
- 作者: 高橋一雄
- 出版社/メーカー: ベレ出版
- 発売日: 2010/01/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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数学勉強中の私が、大変お世話になっている問題集『語りかける中学数学 問題集』の話をしたい。
まず強調しておきたいのは、私自身本当にこの問題集には助けられている。丁寧な解説と豊富な問題量で、「これさえやれば大丈夫」という強い信頼感を感じている。総じて、とてもよい中学数学の問題集だということができる。
しかし、愛着があり使い込んでいるからこそ、不満も多くある。関係者は誰も見ないだろうが、祈りが届くことを期待して、私が感じる本書の不満点を列挙したい。
くりかえすが、本書は良書である。「それでもなお」、感じる不満点をあげる。
1. 開きにくい
厚さ5.2㎝である。
なかほどのページを開く分には問題ないが、最初や最後の方のページを開くのはなかなか難しい。書見台も通用しない厚さである。もっとも、これだけの問題数と解説の量ならば、この厚さは納得なのであるが・・・。
たらいまわされ感
本書は見開き左ページに問題、右ページに解答または解説、アプローチという構成をとっている。だが、問題によって解答が右ページにあったり、章末にあったりまちまちだ。また、「解答は章末」とありページをめくると元のページにある「アプローチ参照」となったりで、ぶ厚い本書をペラペラめくらなければならない場面が結構あり、ストレスがたまる。
「ぶぅ〜」じゃねえよ
本書を読むと、高卒認定試験受験予定者、再勉強する大人も想定読者なのは明らか(むしろ中学生読者はそれほど想定してないのでは)なのだが、その割にうざったい「声」が多い。例えば、
もぉ〜・・・、ぶ-!ぶ-!ぶ-!の気分だぶー!涙(p. 246)
など、ブー太郎かよ!
©さくらプロダクション / 日本アニメーション
といいたくなるコメントがいたるところにある。(筆者は親しみやすくするために書いているのだろうが)「馬鹿にしてんの?あ?」とさすがに感じてしまう。
たまに問題文に登場するキャラクターの名前も「タヌポン」と「ぽん太」など、もうちょっとなんとかならなかったのか、といわざるを得ない(あと、タヌポンとぽん太は紛らわしすぎ)。
参照ができない
たとえば、二次関数の「変化の割合」を解説しているページを読んでいて、「あれ、一次関数の変化の割合」とどう違ってどう同じなんだろうか?」という疑問を持ったとしても、そこに参照ページが書かれているわけではない。厚さ5.2㎝のなかから自力で探し出さなければならないのだ。
せっかく中学数学のすべてを網羅している(と言っている)のだから、その網羅性を生かすためにも参照記号をつけるべきだった。
索引がない
上の「参照ができない」とともに、この点が本書の致命的欠陥であると考える。
中学数学において大事な問題がすべて入っている(と帯に書いてある)のであれば、中学数学の大事な問題を必要に応じて検索できるようにするべきだった。そうすることによって一列に並べられた問題群に幅というか厚みというものが生まれてくる。
たとえば本書を最初から最後までやり終えた後、「どうも自分は円に関する証明問題が弱い。重点的に復習したい」と思ったとしても、本書では厚さ5.2㎝(しつこい)のなかから円に関するセクションを探し、そのなかからさらに証明問題を選んで解くしかない。これがたとえば索引として「円の証明問題 p. ○○、p. ○×、p. ×△・・・」とまとめられていれば、学習者は通読するという方法以外の、本書の使い方を見いだすことができる。そしてそれは学習効果を大きく高めるのではないか。
私の好きな英語学習参考書に伊藤和夫氏の英文解釈教室 改訂版があるが、この参考書には膨大な参照記号および詳細なIndexがついている。伊藤氏は「参考書による学習効果を補完し総括するものとして、充実したIndexが欠かせない」(上掲書別冊 p. 36)とし、Indexを使って参考書を縦横に読むことを薦めている。伊藤氏のマニアックすぎともとれるIndexまでいかずとも、簡単な索引くらいはつけていてほしかった、というのが本音である。
- 作者: 伊藤和夫
- 出版社/メーカー: 研究社出版
- 発売日: 1997/06
- メディア: 単行本
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でも演習用参考書としては、満足
とまあいろいろと不満をぶちまけたが、中学数学の徹底的演習書として、1冊でここまでできるものはなかなかないと思う。私のように、とりあえず中学数学の問題をいっぱい解いて復習したい!基礎固めしたい!と思っていて、時間にある程度余裕のある学習者には、すばらしい問題集だと思うので、おすすめする。
- 作者: 高橋一雄
- 出版社/メーカー: ベレ出版
- 発売日: 2010/01/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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kindle paper white買った
ほしいなーどうしようかなーと1・2ヶ月悩んでいたが、そんなことに悩んでいるなら買ってしまえ!ということで、買った。
いい、これはいい。朝早く起きて、布団にくるまりながら読める!寝る前に読んでも目が疲れない!
とりあえず英語の勉強もかねて、
What I Wish I Knew When I Was 20
- 作者: Tina Seelig
- 出版社/メーカー: HarperOne
- 発売日: 2010/09
- メディア: ペーパーバック
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こちらを読む。
日比谷図書文化館にいってきました
TOKYO図書館紀行 (玄光社MOOK TOKYO INTELLIGENT TRIP 1)で紹介されていたのを見てから、ずっと行ってみたいなーと思っていた日比谷図書文化館に行ってきた。
広々とした公園内にある素敵スポット
日比谷図書文化館は、伝統ある「旧・都立日比谷図書館」の図書館サービスを継承・発展させ、更に千代田区立四番町歴史民俗資料館の機能を移行し、千代田区の特性を踏まえた新しい文化施設です。読む・調べる・学ぶ・楽しむ・交流する・創造する、あなたのための「知識への入口」です。
日比谷図書文化館について|千代田区立日比谷図書文化館
旧都立日比谷図書館を改装し、千代田区立となって2011年に再オープンした施設だ。
皇居のすぐ近く、日比谷公園内にある。もうこの公園でのんびりしたい。ひろびろとしていて、都心にありながら静かで。
池!!
芝生!
日比谷公園内のベンチは思い出ベンチとして、寄付者の名前とメッセージが刻んである。
公園の隅にたたずむ日比谷図書文化館。
まずは、食事をするため館内カフェ&ショップとレストランに行った。丸善のレストランが入っていると聞いていたのだが、どうやら直前に改装をしたらしく、まい泉とPRONTになっていた。残念。結局PRONTOのパスタ食べた。
平日なのにビジネスパーソン(と思われる人)が多い
平日の11時くらいに行き、11時半過ぎに図書館を回り始めたのだが、結構人がいる。しかも、スーツを着たビジネスパーソンがたくさんいた。資格の勉強ぽいことしていた人がいたし、お昼過ぎには少し減っていたところを見ると、昼休憩を利用してきているのかなとも思った。さすが日比谷や。
館内は落ち着いた雰囲気で、書架も動きやすい、見やすい。また、窓にむかって机やソファが置かれている場所もあり、利用者が覆いながらも、リラックスして読書を楽しめる環境が用意されている。行きたくなる図書館だと思った。iPadも使えるみたいだし。
レストランは残念
さきにも書いたとおり、丸善プロデュースのレストランからまい泉&PRONTOになった館内レストランだが、この点は残念。このふたつの店舗が悪いわけじゃないのだが、結構年齢層が上の方々も利用するであろう(実際結構いた)施設に、カフェご飯と、カツってのはどうなのよ、とは思う。
とはいえ、すばらしい図書館だった。休日をここでゆっくり過ごしたい!
けど、行くのに電車賃が結構かかるんだよなあ・・・。
「バリバリ働く」の含意
本日は、たいしてきっぱり表現できるでもない、なんだかなぁ~と思っていることを垂れ流す記事(いつもじゃん)。
先日、大学生の後輩の就活話を聞いた。彼女は就職活動中で、私も乏しい経験からできる限りの(大して求められてもいない)アドバイスをさせていただいた*1。その際、彼女との会話の中で「バリバリ働きたいか否か」ということが話題に上った。
「バリバリ働きたいか」
彼女曰く、「私はバリバリ働きたくない」。どういうことかと尋ねるとどうやら
・異動はそれほどなく
・土日が休みで
・それほど残業とかがない
といったような仕事を見つけたい、ということらしい。
私と一緒だなあ、と思った。私も、上のような環境で働きたいと思っている*2。しかしながら私は、それを「バリバリ働きたくない」と表現することに多少の違和感を感じていた。
というのも、確かに私は残業とか休日出勤とか大嫌いだし、定時になった瞬間「お疲れっす!」と帰りたい人間だが*3、かといって勤務時間中だらだらして過ごしたいわけではない。勤務時間中はタスクリストに表示されたタスクをしっかりこなすし、常に「問題はないか、解決できることはないか。よりよいものを作るにはどうしたらいいか」と意識し、問題解決に取り組んでいるつもりである。なので、その意味では私は「バリバリ働いている」つもりだしバリバリ働きたいと思っている。
「バリバリ働く」の含意
「では、ゆるりすとさんはバリバリ働きたいんですね」といわれたら、「いや、そうでもないかも・・・」と答えたくなる。なぜかというと、どうも「バリバリ働く」に「勤務時間にしっかり仕事をする」以上の意味が含意されていると感じるからだ。「土日も関係なくバリバリやります!」、「バリバリ働いて気づいたら午前2時でした!」等々・・・(極端?)。こういった含意があると感じているので、私はどうも「バリバリ働きたい」といい難い。
勤務時間内にバリバリと仕事をし、なるべく定時でスパッと帰る、私が目指すこういった働き方を表現するいいことば、ないかな*4。
とある1ステップについて ―中学数学問題集の記述より―
あっちやこっちでも書いているとおり、私は数学勉強中だ。中学・高校時代ひどい数学嫌いになり、そのころの不勉強を取り戻すべく中学数学からやり直しているわけだが、勉強中に参考書や問題集を読んでいて躓いたり、あれ?と思って立ち止まることもよくある*1。数学ができる人にとっては「なんでこんなところで躓くわけ?」と思うかもしれないが、今日はそんな躓きポイントの一つを紹介したい。
「~整数より、…は奇数である」のロジック
例として語りかける中学数学のp. 502にある、中2の整数の証明問題を取り上げる。
問題 奇数の平方(2乗)は奇数であることを証明せよ
解答(証明)は以下のようになっている。
[証明]
奇数を2n+1とおくと(nは整数)、
は整数より、偶数に1を加えているので奇数。
よって、奇数の平方(2乗)は奇数となる。終
実に(中学数学として)オーソドックスな問題および証明である(と思う*2)。しかし、私はここでつまづいた。つまづいたというか、あれ?と思った。
は整数より、偶数に1を加えているので奇数
この記述が一瞬わからなかった。なぜ
は整数より
という記述が必要なのか、理解できなかった。
この「~は整数より」・「~は整数なので」という文言は中学数学の整数の証明問題でよくお目にかかるのだが*3、いつも「なんでこの文言がいるんだよ・・・」と思っていたので、順を追って整理してみることにした(2ステップだけだが)。
ステップ1
奇数を2n+1とおくと(nは整数)
ここでまず「nは整数」と宣言する。なぜなら奇数とは2n+1(nが整数のとき)という形をとるから。
ステップ2
は整数より、偶数に1を加えているので奇数。
この証明は要するにnという文字を使って奇数を表し、それを展開しても奇数の形になる、という流れになっている。なので、その展開した形が2n+1(nは整数)の形になっていればよい。
ではは奇数の形になっているかというと、の部分をnと置き換えれば、見事2n+1のかたちになっている!やった奇数だ!
というわけにはいかない。まだ大事な条件「nは整数」を確認していない。この条件を確認していなければ、2n+1の形であっても「奇数である」とは結論付けられない*4。
ここでを見てみると、最初にnは整数と宣言してあったので、ももそしてそれを足し合わせたも整数であるといえる。
というわけで、
は整数より
との一言を加え、見事、「奇数の平方(2乗)は奇数となる」と結論付けることができた。
ぱちぱちぱち・・・
ささやかだけど、持ち続けたいこと
順を追って考えて、「あぁそうだな、そりゃそうだよな」と納得しつつ、自分でも細かいとこで躓いた(というか立ち止まった)なーと思った。しかし私は(私のように数学に苦手意識を持っている人は)、こういう点で立ち止まり、そしてその溝を飛び越えるきっかけを持てずに、数学の道を引き返してしまうことがあるのではないか。この問題を引っ張ってきた語りかける中学数学はものすごく丁寧な参考書だと思うけれども、この1ステップは明示してくれていない。
このような躓き、立ち止まりがいっぱいあるといやだなぁと思う一方、細かいことに気づき、こだわり、考えることは重要だとも感じる。小さな壁にぶつかり、そしてそれを乗り越えることで、自分の思考能力をすこしずつでも広げられる気がするからだ。
ささやかな躓きだけれども、持ち続けたい。
芳沢 光雄 『数学的思考法』
数学教育の啓蒙家として僕もよく雑誌とかで目にする芳沢さんの新書。
- 作者: 芳沢光雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/19
- メディア: 新書
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抜き書き
「仮定」である「世界」が異なれば「結論」は異なる (p. 48)
国際化の本質は「相違なる環境で育った人たちが、自らの立場である『仮定』とそこから導かれる『結論』を明らかにし、異なる立場の人たちとの間で共通の認識を持てるように努力する」ことである (p. 49)
良書、ただ前半は品がない
本書はAmazonの評価がとても高いので期待しながら読んだ(というのもあまりよくないと思うが)。結論から言えば、少々期待外れだった。というか私が想像していたのと内容が違っていたからだ。私は当初、本書は数学的思考法が日常生活でいかに必要なのかを新書一冊かけて解説したものと思い込んでいた。だが実際はそうではなく、数学的思考法が日常生活でいかに必要なのかを「細かいコラムとして紹介したものを集めた」ものだった。そういうわけで、新書一冊かけてそれなりの議論を期待した私にとっては期待が外れた、というわけだ(この点に関しては本書が悪いわけではないが)。
1コラム1テーマを取り上げ、数学的思考法の必要性と有用性を簡潔に示しているので、読みやすい。コラムゆえに数学的な魅力・応用面の魅力を十分に伝えられていないんじゃないかと思わせる個所もあるが、それでも著者の数学教育に対する熱意、数学の面白さを伝えようとする熱意が感じられる。
ただし、非常に残念なのが、本書前半部分がちょっと品がないところだ。
著者が現在の数学教育に大きな不満を抱えているのはよくわかるのだが(そしてその不満はもっともだと思うが)、随所に「いまの教育はだめだー」・「俺がわかいときはー」的な物言いがでてくる。しかし、これもコラムゆえなのかもしれないが、昔はどのような状況でそれがどういう原因によって、どのようにだめなのか、という議論がほとんど展開されていないのだ。たとえば第1章1-2のコラム名は「若者はなぜ「地図の説明」が苦手になったのか」だが、本当に苦手なのか、昔の若者は地図の説明が得意だったのか、といったことには一切触れられていない。それゆえ、「おっさんの説教」臭さが鼻につく、という点が残念ポイントである。